総合格闘技における負傷の実態と傾向

総合格闘技における負傷は、眉・瞼の裂傷、脳震盪、鼻骨骨折、手・指の骨折等、主に頭部・顔面への打撃(特にパンチ)に由来するものが多い。
したがって、ボクシングにおける負傷の予防や対応と同趣旨の対策が総合格闘技においても実施されることが望まれる。

プロとアマチュアとを比較してみると、全体の負傷率は、プロが16.9%であるのに対して、アマチュアは10.1%ないし7.1%と減少していく。その要因としては、①用具(ヘッドギアの有無等)、②ルール(パウンドの有無等)、③競技レベル(レベル≒強度が高くなるにつれて負傷率がアップ)、④レフェリーストップの早さ(競技レベルが低い試合ではレフェリーストップのタイミングが早くなる)、⑤競技キャリアにおけるダメージの蓄積、などが考えられる。

今後はさらに、網羅的かつ長期的なデータの蓄積、および負傷の要因ごとに特化した詳細な研究によって負傷因子をより明確にし、余計な負傷や過剰なダメージがもたらされないよう、ルールや医事体制等、競技環境の整備が求められる。

【抄録】「総合格闘技における負傷の実態と傾向:試合現場におけるリングドクターの診断結果から―」(松宮智生, 2013年,体育・スポーツ科学研究13巻7-14頁)